コトバ探求

毎日使う日本語が、あなたと誰かを繋いでる。 ほんのちょっとだけ丁寧に、言葉を選んで話しましょ?

アップデートとアップグレードはどう違うの?

2010年あたりからの短い間に、すっかりスマートフォンは生活になくてはならないものに変わってしまいました。

それに伴って、いろいろな言葉が日本語の仲間入りをしました。

 

スマートフォン以前にはパソコンを使う人だけが目にしていたコンピューター上のあれこれが、一般のすべての人が知るべき言葉になってしまったのです。

 

このブログでは、そんなコンピューター上のあれこれについても、日本語の仲間と考えて調べて整理しようと思っています。

 

今日はその第一回。少し気になったので「アップデート」と「アップグレード」の違いをしっかり調べておこうと思います。

 

いつも通り結論から。

「アップデート」はアプリの状態を最新の状態に追い付かせる作業のことです。

一方「アップグレード」はアプリの契約や機能を一段階上のものに切り替えることです。

 

さて、こんな外来語から始まる日本語の旅を今日も始めましょう。

 

 

アップデートは「日付の更新」

アップデートとは、アプリの最終点検日を更新する作業です。

アプリは完成体として配布されているわけではなく、常に微修正が重ねられています。

 

その微修正を最後に行なった日付を書き換える作業が「アップデート」と言えます。

 

言葉の由来は英語のupdateなのですが、その語源は「deh-与える」という印欧祖語に遡ります。記録物に記録した日を与えること、まさに「日を付けること」を由来とする「日付」と同じ観念から生まれた言葉ということです。

 

なお若者たちの間では、「アプデ」と略されて呼ばれています。

人気ゲームの更新日には「アプデ情報が入った」と言って、ゲームの新しい仕様について、SNS上での盛り上がりを目にすることがあるかもしれません。

 

アップグレードは「等級の格上げ」

一方、アップグレードはアプリの等級を格上げすることを意味します。

gradeは等級を意味する英語で、一昔前には「グレードアップ」という表現が親しまれてきました。

アプリ以外でも、たとえば保険の補償範囲を広げる場合、あるいは自動車の内装レベルを上げる際にも「アップグレード」という表現を使うことができます。

それら例からも明らかですが、アップグレードには時折費用が発生します(すべてのアップグレードが有償とは限りません)。契約をよく読むことをお勧めします。

 

ちなみにgradeと共通の語源をもつ言葉に「graduate(卒業)」があります。元は「階段の段」を意味する言葉でしたから、人生のステップアップの場面で用いられているのは納得ですね。

これと同様に、アップデートに比べアップグレードは大きな変化をもたらすことを覚えておきましょう。

 

ダウンロードはダウンなのに新しくなる?

ところで、よく尋ねられる言葉にダウンロードという表現があります。

ダウンと書いてあるからには、アップデートの逆で、何かの性能が落ちるのではないかと頭をよぎるそうです。

 

しかし実際にはその逆です。

アップデートもアップグレードも、大抵はそのためにダウンロードという作業を挟みます。

そしてその結果、手元の端末はより優れたものに変わることがほとんどです。

 

というのもダウンロードとは、ネット上にある情報を手元の端末に保存し読み込ませる作業全般のことを指すからです。

 

なぜその作業を「ダウンロード」と呼ぶのでしょうか。

 

「ロード」の語源を見てみましょう。

「ロード」だから「道」だと思ってしまいがちですが、この「ロード」は「load」であって「road(道)」とは違う由来を持ちます。

  • road(道):ride(乗馬)から
  • load(積荷):馬の積み荷、旅が由来

語源を見ると、「読み込み」というより「積み下ろし」のイメージが正しいことがわかります。つまりダウンロードとは、データ通信によって運ばれてきたデータという荷物を、手元の端末で下ろすことだったのです。

 

したがってダウンロード(荷下ろし)すると、データは手元に残ります。

もしダウンロードしたデータに有害なものや、違法性のあるものが含まれていれば、それは手元の端末に残り続けてしまうので注意が必要です。何をダウンロードしているのかは常に把握するようにしなければなりません。

 

まとめ

今日はアップとかダウンがついているコンピューター用語をさらりと解説してみました。

 

アップデートは最終点検日の日付を更新すること。

アップグレードは等級を引き上げること。

ダウンロードはデータという積荷を手元に下ろすこと。

 

噛み砕いてみればそう難しい言葉ではありませんね。

 

それにしても、近年の外来語の流入量は過去に類を見ないほどで、世界的に言語の統一が進んでいく過程を見るようでもあります。

とはいえ日本語の独自性も損なわれてほしくはないと思うわたくし。これからも丁寧に由来や意味を知って、言葉を使っていきたいものです。